私たちは、相手の力になろうとしているのに、かえって相手を傷つけてしまうことがあります。
友人が「最近、仕事のストレスがすごいんだ」と話すと、すぐに「だったら転職すればいいじゃない」と答える。
家族が疲れを訴えると、「時間の使い方が悪いんじゃない?」と分析を始める。
子どもが学校で友達に誤解された話をすると、すぐに「こうすればよかったのに」と教えようとする。
どれも相手を思っての言葉かもしれません。
しかし、相手は必ずしも、すぐに解決策を求めているわけではありません。
ただ、自分の話を最後まで聞いてほしいと思っていることもあります。
本当に相手の話を聴くということは、完璧な答えを用意することではなく、「あなたの気持ちを大切に受け止めています」と伝えることです。
人との会話でよくあるのが、相手がまだ話している途中なのに、頭の中ではすでに返事を考えてしまうことです。
問題を分析したり、自分の経験と比べたり、どんなアドバイスが役に立つかを考えたりします。
その結果、相手が本当に伝えたいことを見逃してしまう場合があります。
たとえば、友人が「最近、仕事が本当にしんどい」と言ったとします。
私たちは仕事量が多いことが原因だと思うかもしれません。
しかし、その友人が本当に伝えたかったのは、一生懸命働いているのに、上司から努力を認めてもらえない寂しさかもしれません。
十分に理解する前にアドバイスを始めると、会話がかみ合わなくなることがあります。
相手の話を上手に聴くために、まず三つの習慣を意識してみましょう。
一つ目は、すぐに問題を解決しようとしないことです。
相手が気持ちを話しているときは、途中で遮らず、最後まで耳を傾けてみてください。
すでに自分の考えがあっても、相手が話し終えるまで待つことができます。
二つ目は、自分の理解が合っているか確認することです。
たとえば、「仕事が多くて疲れているだけじゃなくて、頑張っているのに認めてもらえないこともつらいんだね。そういうことかな?」と伝えてみます。
これは、相手の考えにすべて賛成するという意味ではありません。
自分が理解したことを伝え、相手が必要に応じて説明し直せるようにするのです。
三つ目は、相手がどのような支えを必要としているか尋ねることです。
「今は話を聞いてほしい? それとも一緒に解決方法を考えようか?」
こうした一言があるだけで、すれ違いを減らせることがあります。
人は、ただ寄り添ってほしいときもあれば、具体的な助言を求めているときもあるからです。
また、良い聴き方には沈黙を受け入れることも含まれます。
相手がつらい出来事を話しているとき、必ずしもすぐに言葉を返す必要はありません。
少し静かな時間をつくることで、相手が自分の気持ちを整理できることもあります。
もちろん、相手の話を聴くことは、すべての意見に同意することではありません。
相手の感情をすべて引き受ける必要もありません。
友人の悲しみを理解しながら、その行動については違う考えを持つこともできます。
自分に十分な余裕がないときには、「ちゃんと話を聞きたいけれど、今は少し疲れているから、夜にゆっくり話してもいい?」と伝えてもよいのです。
本当の傾聴には、相手への思いやりと、自分自身の状態への理解の両方が必要です。
人間関係では、コミュニケーション能力というと、上手に話す力を思い浮かべがちです。
しかし、ときには話すことを少し控え、相手を理解しようとする姿勢のほうが、心の距離を縮めることがあります。
自分の気持ちが受け止められていると感じると、人は安心して、さらに深い思いを話せるようになることがあります。
次に、大切な人が悩みを打ち明けてくれたときは、こう問いかけてみてください。
「この人は今、私に何を一番理解してほしいのだろう?」
ときには、気の利いたアドバイスよりも、安心して話せる時間そのものが、相手への大きな支えになるのです。